

2026.01.25

⬛︎ 歯槽骨吸収は「歯の問題」ではない
――40代後半から見えてくる、本当の原因
歯周病による歯槽骨吸収は、
一般的には「歯磨き不足」「プラークコントロール不良」が原因と説明されることが多いものです。
しかし、臨床の現場で長年患者さんを診ていると、
それだけでは説明できないケースが、あまりにも多く存在します。
特に40代後半以降に起こる歯槽骨吸収には、
ある共通した背景があることに気づかされます。
⬛︎ 最大の原因は「過労」と「慢性的睡眠不足」

私の臨床経験上、
40代後半以後に不可逆的な歯槽骨吸収を起こしている方の多くに共通するのは、次のような生活背景です。
☆ 長期間にわたる過労
☆ 慢性的な睡眠不足
☆ 常に緊張状態が続く生活
☆ 回復する時間を持てない働き方
歯周病は感染症であることは間違いありません。
しかし、「どこまで進行するか」「どこで止まるか」は、
その人の回復力に大きく左右されます。
若い頃は、多少の無理がききます。
☆ 寝なくても何とかなる
☆ 炎症が起きても修復が追いつく
☆ 体力で帳尻が合う
ところが40代後半以降になると、
同じ生活負荷が、修復されないまま蓄積していきます。
その結果として現れるのが、
歯槽骨という「戻らない組織」の吸収です。
⬛︎ 「頑張ってきた人」ほど起こる現実

皮肉なことに、
重度の歯槽骨吸収が起きている方ほど、次のような傾向がはっきり見られます。
☆ 真面目
☆ 責任感が強い
☆ 若い頃から無理を重ねてきた
☆ その働き方・生き方を変えられなかった
これは怠慢の結果ではありません。
むしろ、それだけ長い間、頑張り続けてきた証明でもあります。
歯槽骨吸収は、
「失敗の結果」ではなく、
無理を引き受け続けてきた人生の履歴が、
身体に刻まれたものとも言えます。
ただし、ここで大切な視点があります。
それは、
「これまで頑張ってきた」ことと、
「これからも同じ形で引き受け続ける」ことは、
別の問題だという点です。
⬛︎ 歯周組織は、生活の状態を正直に映す
歯周組織は非常に正直です。
☆ 血流
☆ 自律神経
☆ ホルモンバランス
☆ 免疫と炎症のコントロール
☆ 睡眠の質
これらすべてが、
歯肉や歯槽骨に反映されます。
しかも歯槽骨は、
一度吸収されると元には戻りません。
だからこそ歯周病は、
歯の病気であると同時に、
生活の病気でもあるのです。
⬛︎ 本当に大切なのは「これからの引き受け方」

歯槽骨吸収が進行しているという事実は、
あなたがこれまで、多くの責任や無理を
一人で引き受けてきた可能性を示しています。
それは誇るべき努力であり、
否定されるものではありません。
しかし同時に、
これから先も、同じ形で引き受け続ける必要があるのか
を、改めて見直す時期に来ている、という合図でもあります。
☆ すべてを自分で抱えない
☆ 休むことを許す
☆ 睡眠を削らない
☆ 無理を前提にしない生活に切り替える
歯周治療とは、
歯を守る治療であると同時に、
その人の人生の持続可能性を守る医療でもあります。
⬛︎ 歯科医師として、ひとりの生活者として
これは、患者さんだけに向けた話ではありません。
日々の診療を続けている私自身も、同じ現実の中にいます。
若い頃のように無理を重ね、
疲れや睡眠不足を「まだ大丈夫」とやり過ごす。
その積み重ねが、どこに現れるのかを、
私は臨床で何度も見てきました。
だからこそ今、
「もう少しだけ、引き受け方を変えてもいい」
そう自分にも言い聞かせています。
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⬛︎ 40代後半のあなたへ

もし今、
歯周病や歯槽骨吸収を指摘されて、
どこか納得できない気持ちや、
言葉にしにくい疲れを感じているなら。
それは、あなたが
いい加減に生きてきたからではありません。
むしろその逆で、
長い間、責任を引き受け、
無理をし、踏ん張り続けてきた人ほど、
この時期に歯周組織に変化が現れます。
歯槽骨吸収は、
それだけ頑張ってきた証明でもあります。
ただし、ここから先は少し考え方を変えてもいい。
これまでと同じやり方で、
同じ量の無理を、
これからも一人で引き受け続ける必要があるのか。
☆ 休むことを後回しにしていないか
☆ 睡眠を削る生活が当たり前になっていないか
☆ 「自分がやらなければ」で、抱えすぎていないか
歯は、
これまでの人生を否定するために壊れるのではありません。
これから先の人生を、
もう少し長く、安定して続けるために、
先にサインを出してくれているだけです。
歯槽骨吸収は、
あなたに「やめなさい」と言っているのではなく、
「引き受け方を変えてもいい」と
静かに伝えているのだと思います。
⬛︎ 歯は、人生の無理を教えてくれる
歯槽骨吸収は、
人生の「罰」ではありません。
これまでの頑張りが、
身体に残した痕跡です。
そして同時に、
これ以上、あなた一人が引き受け続けなくてもよい、
という身体からのメッセージでもあります。
歯が先に教えてくれただけなのです。
もし歯周病の進行を指摘されたなら、
それは歯だけの問題ではありません。
これからの生き方を更新するタイミングに来ている。
そう受け取っていただければと思います。
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