神戸市西区の医療法人 ありせファミリー歯科 院長ブログ
医療法人社団ありせファミリー歯科

2020.07.17

縄文時代の抜歯 その理由

縄文時代の抜歯 その理由

縄文時代の抜歯の風習について、
その理由を、現役歯科医師の立場から推理します。





*上の写真は、縄文時代の人骨について、大変面白く、そしてわかりやすく解説されている本です。今回の記事を書くにあたって、大いに参考にさせていただいています。以下の写真も、この本のものです。



縄文時代の抜歯 その理由

まず着目したいのは、初めての抜歯の時期と抜く歯の種類です。
男女とも、「15才から20才ころ」に、「上左右の犬歯」を抜いています。

これにより、なにが起きるのか。





本来、犬歯は、上下の歯を奥歯で噛み締めた状態から、左右にギリギリ小刻みに動かした時に、もっとも強く当たる歯になります。

もしこの犬歯を抜歯したなら、
ギリギリしたときに上下の奥歯が全て同時に当たるようになります。

成長期に抜歯すれば、年配になって抜歯するよりも、顎の骨の変化が起きやすくなり、結果的にギリギリした時の関節の可動域も大きくなります。



この状態は歯ぎしりするときに、左右の奥歯が全て同時にあたる「両側性平衡咬合(りょうそくせい へいこうこうごう)」という、現代では特殊な噛み合わせです。
顎関節の可動域と上下の歯の接触面積を考えると、皮なめしなどの作業には最も効率的な歯並びだといえます。



縄文時代の抜歯 その理由

もし、これが縄文時代の人たちの抜歯の目的であったとしたら、
現代の歯科医師並みの咬合の知識があったことになります。


以上、わたしが歯科医師の立場から考えた、縄文時代の抜歯の理由です。




縄文人の抜歯の風習は
現代人の私たちからは、野蛮で恐ろしい風習とされています。

抜歯の痛みに耐えることが大人になる儀式だとする解釈が現在では主流ですが、
人工的に両側性平衡咬合を獲得するという明確な目的の下に行われたとする方が、より自然な解釈とは言えないでしょうか。

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