神戸市西区の医療法人 ありせファミリー歯科 院長ブログ
医療法人社団ありせファミリー歯科

2023.10.22

【接着ブリッジ】「削らない」は間違い

【接着ブリッジ】「削らない」は間違い

今回は、「接着ブリッジ」についてご説明します。
接着ブリッジとは、歯が欠損した場合に、歯を補綴(ほてつ)する治療法の一つです。
(この記事では、主に前歯を含む接着ブリッジを扱っています)


みなさまに理解しやすいように、「デメリット」「よくある誤解」「向いている人」の順番でまとめてみました、
まずはデメリットから見ていきます。


【接着ブリッジのデメリット】
(デメリット①)
噛む力の強い人は、接着ブリッジをしてはいけない、または極力避けなくてはならない。
→歯が噛む力で割れたり欠けたりしたことのある方や、天然歯が咬耗している方は、接着ブリッジは避けるべきだと考えなくてはなりません。
日本補綴学会のガイドラインには、この事項が第1番目に記載されています。






(デメリット②)
仮の歯が入れられない。または、入れにくい。
→通常のブリッジでは、治療期間中の見栄えを配慮して仮の歯を作成し、装着するのが一般的です。それに対して接着ブリッジでは、仮の歯を装着することが著しく困難です。場合によっては、一定期間、前歯が無い状態での生活を送る必要が生じます。






(デメリット③)
脱離した場合、自分では元に戻せない。
→通常のブリッジなら、脱離してもとりあえずは自分で元に戻せることができる場合が多いです。そのため、歯科医院をすぐに受診できなくても数日程度は普通に生活できます。
それに対して、接着ブリッジは脱離すると、自分で復位させることはまずできません。歯科医院を受診するまでは、前歯のない状態での生活を強いられます。






(デメリット④)
脱離する際の前触れがほとんど無い。
→外れる時は、ある日、突然歯が取れます。
いつ、どのタイミングで外れるかは、ほとんど予想できません。
そのため、人前だったり、仕事中だったり、突然に前歯がぽろんと取れてしまう危険があります。
場面によっては、大変な恥ずかしい思いをする可能性もあります。






(デメリット⑤)
脱離した際の再利用が困難である。
→日本補綴学会のガイドラインでは、脱離した接着ブリッジの再利用は推奨されていません。
外れた場合には、基本的には再作成が望ましいと専門医は認識しています。






(デメリット⑥)
見た目の美しさは、通常のブリッジに比べて劣る。
→特に前歯では、正面から見た際に、人によっては金属部品が若干見える状態になることがあります。見た目の美しさを追求したい方にとっては、不向きな治療法といえるかも知れません。





【接着ブリッジ】「削らない」は間違い

以上が接着ブリッジのデメリットのまとめです。







接着ブリッジをWEB検索にかけると、素晴らしい治療法としての側面が強調された記事もありますが、現実には、まだまだ課題が多く、ほとんどの歯科医師は導入を見送っています。





さまざまなWEBページで、接着ブリッジを紹介する記事がありますが、中には接着ブリッジを誤解した歯科医師が、誤った内容を公開している例も、残念ながら存在するようです。




【接着ブリッジ】「削らない」は間違い

ここからは、歯科医師でさえ理解が難しい接着ブリッジの詳しい解説を行います。





【接着ブリッジの誤解①】
新しい治療だと勘違いしている歯科医師もたくさんいるようです。しかし、昨今に始まった新しい治療法ではありません。
今から40年前、接着性レジンセメントという、現在も主流として使用されている非常に強力な歯科用接着材が実用化されました。この、接着性レジンセメントを活用した新しい治療法として、大阪歯科大学で当時、盛んに研究されていた治療法です。
その後、研究の場は岡山大学に移りましたが、30年ほど前から普及しだしたインプラント治療により、接着ブリッジの研究発表自体はほとんど行われなくなりました。
この20年くらいは、日本中のほとんどの歯科医院で行われることのなかった治療法です。
なぜ、広く行われなかったのか。
それは、先にご説明したように、【すぐに外れてしまう】のが、その原因です。





【接着ブリッジの誤解②】
名前に似合わず、接着力はかなり弱いです。実際、かなり高い確率で外れます。
歯科医師なら誰もが知っていることなのですが、普通に削った従来型のブリッジでさえ、脱離される患者さまは一定の割合で必ず存在します。
ブリッジで健康な歯を削るのは、装着するブリッジが外れないようにするためです。
削る量を減らせば、脱離するリスクは当然高くなります。





【接着ブリッジの誤解③】
どんな人にも適応される治療法ではありません。日本補綴学会のガイドラインでは、咬合力の強い方は、避けるべきであるとの、強い推奨がなされています。




【接着ブリッジの誤解④】
さまざまなWEBサイトでは、「削らないブリッジ」と紹介されていますが、これは完全な誤りです。接着ブリッジもある程度、必要な量だけは、歯を削ります。
全く別の治療法として、【削らない接着ブリッジ】という名前の治療法を導入している歯科医院が存在します。「削らない接着ブリッジ」は、「接着ブリッジ」とは、全く異なる治療法になりますので、注意が必要です。



【接着ブリッジの誤解⑤】
金属を全く使わない場合は、「ジルコニア接着ブリッジ」と呼ばれているようです。
また、全く歯を削らない場合は、「歯を削らない接着ブリッジ」という名前の治療法が別に存在します。
大変、まぎらわしいのですが、「接着ブリッジ」と、「ジルコニア接着ブリッジ」「歯を削らない接着ブリッジ」は、全て別々の異なる治療法です。
このうち、保険適応になっているのは、「接着ブリッジ」だけです。
「接着ブリッジ」さえ、歯科医院が200〜300軒あったとして、取り扱っているのは、そのうちの1軒程度と考えられるのに、「ジルコニア接着ブリッジ」「削らない接着ブリッジ」となると、日本中探しても数軒程度しか存在しません。
普及していないということは、それなりの原因が存在すると考えた方が良いでしょう。
この記事では、「接着ブリッジ」の解説をしています。「ジルコニア接着ブリッジ」「削らない接着ブリッジ」について詳しく知りたい方は、また別のサイトを参照してください。



【接着ブリッジ】「削らない」は間違い

ここまで読まれた読者のかたは、ある疑問が浮かぶはずです。
それほど問題がある治療法が、なぜ今まで消えずに残っているのか。また、なぜ今になって保険適応されたのか。




それには、接着ブリッジがどんな人に向いているのかを考えれば、理解がしやすいと思います。






【接着ブリッジが向いている人の特徴】
①上下の前歯がほとんど接触しない。
→上下の歯が当たらない噛み合わせの方は一定の割合で存在します。
そうした方は、接着ブリッジが適している体質だと言えます。





②笑っても、上の前歯が唇に隠れてほとんど見えない。または、一時的に前歯がなくても、それほど気にしない。
→見た目さえ気にならないなら、前歯がなくても案外困ることは少ないです。





③時間的な余裕がある。
急にブリッジが脱離しても、すぐに歯医者に行く時間の余裕がある方は、それほど切迫した状況にならずにすみます。




【接着ブリッジ】「削らない」は間違い

ここに挙げた3つの条件がすべてそろっているなら、接着ブリッジを治療の選択肢として考えて良いと思います。
しかし、1つでも当てはまらないなら、他の治療方法を検討されるほうが良いでしょう。







以下に日本補綴学会の公式サイトに掲載されている「接着ブリッジのガイドライン」のリンクを添付しておきます。
↓↓↓↓
https://www.hotetsu.com/s/doc/bridge_guideline2017.pdf







ブログ一覧に戻る