2020.07.17
中学校の歴史の授業で、習ったご記憶のある方もおられるかもしれません。
縄文時代の日本列島に住む人たちの間では、歯を抜く習慣がありました。
健康な歯を何らかの目的で抜いていたようです。
その目的はいまだに解明されていません。
わかっていることは、
①一定の年齢に達したら、男女ともほとんどの人が行った。
②縄文時代を通じて日本列島全体で行われた。
③歯を抜く部位や本数は、明確なルールが存在した。
抜歯のルールは、基本型は一つで、そこから派生した変形型が2系統ある。
④2つの系統の人たちは、同じ村で暮らしていたが、食べていたものの種類や身につけていたものの種類が分かれていた。
また、死後に埋葬される際も別々の場所に分けられていた。
⑤弥生時代にも。一部で見られたが、厳格なルールは守られなくなっていた。
⑥30才程度の人骨で、死の直前または死の直後に抜歯された例が1例ある。それは、本来の歯の一つ隣、左上側切歯で、しかもちゃんと抜けずに歯冠で割れていた。
ありせファミリー歯科のすぐ近くの弥生時代の遺跡からは、抜歯の施された人骨が発見されています。
歯科医師の立場で考えた場合、抜歯にはそれなりに納得のいくような実用的な理由があったのではないかと想像してしまいます。
縄文時代の人の歯には、物を噛み砕く以外に、何かしらの道具として使われた形跡とされる咬耗(こうもう)が著しいとされています。
糸をよったり、皮をなめしたりする用途だと想像されていますが、はっきりしたことはわかっていません。
現代人の私たちよりも、歯を道具として利用していた縄文時代の人たちが、たいした理由もなく、わざわざ抜歯をしたとは、わたしは考えにくいと思います。
隙間を開けることが、特定の作業に、必要だったのか、もしくはやりやすくなるのではないか。また、それは大人になったら、誰もがしなくてはならない作業だったのではないか。
歯科医師の立場から、縄文人の抜歯の意味について考えてみました。
まず、10代半ばで、上左右の犬歯を抜歯した場合、
歯ぎしりする時に全ての臼歯が同時に接触する状態が人工的に作られます。
多くの人では、犬歯が存在することにより、歯を噛みしめた状態から左右にギリギリ歯ぎしりしたときに、臼歯が接触しない状態になっています。
犬歯を若い時に抜くことで、奥歯同士が歯ぎしりで接触しやすくなり、
奥歯のすり減りが生じやすくなります。
結果的に、歯の磨耗が極度に進行して、両側性平衡咬合(りょうそくせい へいこうこうごう)という、現代では非常に珍しい噛み合わせのタイプになると考えられます。
これは、歯を道具として動物の皮なめしなどに使う場合には、最も適しています。
自分たちの「歯並び」「噛み合わせ」を、作業しやすいように、
意図的にデザインしていたのではないかと、私は推測しています。
縄文人たちは、正しい咬合の知識と抜歯の実践によって
両側性平衡咬合を計画的に手に入れていたという可能性も十分検討に値すると私は感じています。
以上、歯医者の立場で考えた、縄文時代の抜歯の風習でした。
以下に、さらに詳しく解説していますので、興味のある方は是非こちらもご覧ください。
【歯医者の考える縄文人の抜歯】
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