神戸市西区の医療法人 ありせファミリー歯科 院長ブログ
医療法人社団ありせファミリー歯科

2020.07.24

縄文時代の抜歯 さらに詳しく

縄文時代の抜歯 さらに詳しく

縄文時代に行われた抜歯は、両側性平行咬合(りょうそくせい へいこうこうごう)という、特殊な噛み合わせを人工的に獲得する目的で行われた可能性について、前回の記事でご紹介しました。

今回は、より詳しく知りたい方のために、さらに掘り下げてご説明していきます。 

物を噛む筋肉の働きには、3つのグループがあります。

①口を開け閉めする筋肉
②上下の歯をピタリと噛み合わせた状態から、強く噛み締め、食いしばる筋肉
③上下の歯を食いしばった状態から、左右にギリギリする筋肉


このうち、「口を開け閉めする動作」と「食いしばる動作」は、人間なら誰もがほぼ同じ動きをするため、個人差はあまりありません。





「歯を食いしばった状態から下顎をギリギリ動かす動作」は、その人の歯並びによって動き方が異なります。
このギリギリした時の下顎の動きは、歯学では、咬合様式という名称で数種類に分類されています。




【咬合様式】
①臼歯離開咬合(きゅうし りかいこうごう)
ギリギリする動きで、主に上下の犬歯が接触し、上下の臼歯の部分は接触しない。
ほとんどの人はこの噛み合わせです。

②片側性平行咬合(へんそくせい へいこうこうごう)グループファンクションド オクルージョン
ギリギリする動きで、右方向なら右の臼歯部のみで上下の歯が接触し、反対の左の臼歯部は離開する。左はまた逆になる。
加齢により、犬歯が咬耗(こうもう)する事で生じる咬合様式です。

③両側性平行咬合(りょうそくせい へいこうこうごう)フルバランスド オクルージョン
左右どちらにギリギリしても、左右上下の全ての臼歯が常に接触する。
自然界では、歯の極度の咬耗によって起こることがありますが、非常に珍しいとされる咬合様式です。縄文人はほとんどがこの咬合様式だと考えられます。


当院ありせファミリー歯科において受診された方の中でも、天然歯が多数残存していて、しかも両側性平行咬合の方は、1万人に5人もいませんし、みなさん60才以上です。
それだけ珍しい現象で、また歯が咬耗するまでに年月がかかると考えられます。

しかし、縄文人骨では、ほとんどの人は、激しい歯のすり減りが起こっており、両側性平行咬合の咬合様式だったと考えられます。

これは偶然の結果ではなく、上顎左右の犬歯を10代後半で抜歯することにより、ギリギリした際に奥歯が接触しやすい状態を意図的に作ったのではないかと、わたしは想像しています。 







その理由は、歯を道具としてさまざまな用途に使いやすくするためだったのではないでしょうか。

現代人も、きれいな歯並びにするために、健康な歯を抜歯することがありますが、これも何ら不自然な事ではありません。





また、麻酔も無い時代に抜歯の激しい痛みに耐えたとする考古学の見解があります。
もし私が縄文時代にタイムスリップして、抜歯する役割をになうとなったら、どうするかを想像してみました。








抜歯においては、歯根膜という部位がしびれる必要があります。
これは、固いものを長時間噛み続ければ実際にしびれるので、縄文時代でも可能です。

イメージとしては、人気漫画「鬼滅の刃」の主人公の妹がつけている竹の筒です。
あんな感じで1時間も犬歯で強く噛み続ければ、
犬歯の歯根膜の血流は阻害され、結果、数分間のしびれ状態が得られると考えられます。

長時間正座して、足がしびれる原理と同じです。
抜歯は、「のみ」と「つち」の2種類の道具が有れば、一瞬で抜けます。

歯の神経には、歯髄神経と歯根膜神経の主に2種類あります。このうち、痛みを激しく感じるのは歯髄神経です。抜歯の際の痛みにはあまり関係しない神経なので、上記の方法ならば、そこまで激痛でもなかったのではないかと推測されます。





以上、現代の歯科医師の考える縄文人の抜歯の理由でした。

ブログ一覧に戻る