神戸市西区の医療法人 ありせファミリー歯科 院長ブログ
医療法人社団ありせファミリー歯科

2022.07.18

解説【謎のドックズベストセメント】

解説【謎のドックズベストセメント】

今回は、ドックズベストセメントと呼ばれている治療法について解説致します。




【ドックズベストセメント】とは、日本の一部の歯科医院で行われている、歯髄保護(歯の神経をのこす)を目的とした歯科治療用のセメントの呼称および治療法のことを意味します。





しかし、この治療法は
「英語力の不足した歯科医師の誤解が産んだ治療法である」
という意見もあります。





以下に詳しく解説していきます。



解説【謎のドックズベストセメント】

ドックズベストセメントとは、アメリカ合衆国の歯科材料企業であるcooley&cooley社が、今から20年くらい前(2003年)に発売開始した、歯科合着材料です。






正式名称は、
【Doc's best white copper kit】
「ドクターズ ベスト ホワイトカッパーキット」
です。


日本語に訳すと、
「歯科医師にとって、最高の白い銅セメントキット」
という意味になります。















いろいろな呼び方がありますが、
「ドクターズ ベストセメント」が本来の意味なので、
【ドックズベストセメント】が正解です。

解説【謎のドックズベストセメント】

取り扱い説明書には、
「虫歯を取り残した部位にたいして、接着力が期待できる」
と書かれています。





歯科治療を行う際に、
銀歯などの詰め物やかぶせ物は、
接着剤(正確には、合着材)
によって、歯とくっつけます。





歯科医師が虫歯治療を行う際、
万が一、虫歯を削り残してしまうと、詰め物の接着剤の効果がかなり低下してしまいます。
言いかえれば、
見落としや不注意などが原因で虫歯を削り残した場合には、接着剤の効き目が弱く、詰め物が非常に外れやすくなります。
   










この、ドックズベストセメントは、
【虫歯を削り残しても、詰め物の接着剤がちゃんと効果を発揮する】
というのが特長の材料です。





大変残念なことですが、日本の一部の歯科医師たちが、この説明文を誤解したことが原因となり、日本の歯科界で、
【ドックズベストセメント】が普及してしまいました。


解説【謎のドックズベストセメント】

「虫歯を削り残しても、銀歯を歯にくっつける接着力が期待できる」
というのが、本来の英文です。






しかし、英語を誤訳して、
「虫歯を削り残しても、虫歯菌を完全に殺菌する殺菌力が期待できる」
と思い込んだ歯科医師たちが、残念ながらいたようです。
そして日本中に、ドックズベストセメントを普及させてしまいました。







解説【謎のドックズベストセメント】

ちなみに、ドックズベストセメントは、色々な名称で呼ばれていますが、これは歯科医師の英語力の不足が原因のようです。




ドッグベストセメント
ドッグスベストセメント
ドッグズベスト
ドックベストセメント
ドックスベストセメント
など、さまざまな歯科医院のウェブサイトにおいて、言い間違いが非常に多いです。







「Doc's」が、「Doctors'」の略語だと言うことが、一部の歯科医師の理解を超えている現状に、同業者としては、非常に残念に思います。





ドックズベストセメントを導入している歯科医師は、特に英語が苦手と予想されるため、治療法の名称にも、混乱が生じるのはやむをえないのかも知れません。





1人の歯科医師が、その生涯において受け持つことのできる患者さまの数には限りがあります。
そうした中で、わたしたちを信じて、そして頼って通い続けてくださる患者さまたちに、常に全力で、誠実に向き合わなくてはならない。
わたしは歯科医師として、それは当たり前の事だと強く思います。



ドックズベストセメント治療を導入、または検討されている歯科医師の先生たちには、今一度再考を願いたいと思います。








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