神戸市西区の医療法人 ありせファミリー歯科 院長ブログ
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2024.07.09

日本語考察「矢尻(やじり)」【後編】

日本語考察「矢尻(やじり)」【後編】

日本語では、弓矢の矢の先につける鋭く硬い部品を「矢尻(ヤジリ)」と言います。
世界的に見ると、この部分の名前は「矢頭」「矢のヒント」「矢の先」「矢の上」
「矢の目」などと呼ばれています。


外国と比べても、「矢尻」と言う言い方は、ずいぶん珍しい名前という事が言えますが、実は世界中で最も古い矢尻の発掘例は、1万5千年以上前の日本だとされています。
その当時の日本に住む旧石器時代人が、私たちと同じ日本語を使っていた可能性も高く、もしかしたら、矢尻を発明した人たちなのかも知れません。

なぜ、日本語では、「矢尻」のことを、「矢の尻」と名付けたのか。当時の人たちがどのような気持ちや考えを持っていたのかを想像してみたいと思います。






矢は細長い形をしています。一方の端を「矢尻」と呼び、もう一方の端は、「やはず」と呼ばれます。「矢尻」に対して「矢筈(やはず)」という部分です。

「矢筈(やはず)」とは、弓のつるに引っ掛ける、矢の切れ込みの部分の名前です。
この「はず」は、日本語でも特に重要な役割を担う言葉です。

「はず」「はずだ」「はずす」
「外れる」「恥ずかしい」
などと言う単語は、「やはず」から派生した言葉と考えて良いと思います。

そして、「はず」の語源は、当然「はし」または「はじ」でしょう。
「はじ」とは、「はじっこ」と言う意味があり、また「はじめ」「はじまり」と言う意味もあります。

矢の、弓につがえる部分を「やはず」。すなわち「矢のはじっこ」「矢のはじまり」と呼ぶならば、その反対側の部分を「矢の終わり」という意味として「矢尻(やじり)」と呼ぶのは、日本語を使う私たちにとっては、ごく自然なことに感じます。

また、矢を作る手順を考えれば、まずは矢筈から作り始め、矢尻を最後に取り付けることになります。初めの工程を「はじっこ、はじまり」を意味する「はず」、最後の工程で取り付ける部品を「おわり、おしまい」を意味する「尻」と呼ぶのも、理にかなっていると言えます。

「矢尻」と言う名前に関しては、使う人の目線で名付けられたのでは無く、作る人の視点でつけられているような印象を受けます。
それに対して、「矢頭」「矢の上」と言う名前になると、作る人の視点では無く、使う人の目線に近い名付け方に感じます。

はじめて矢を発明した人がいるとすれば、矢尻の部分を「頭」と呼ぶよりも、やはり「尻」と表現したくなると思います。
それに対して、作り方も使い方もまだ知らない状態で、初めて矢を見た人は、「矢尻」の部分が、「頭」に見えるかも知れません。


世界中で最も古い矢尻の出土例が、現在のところ日本と言うことになるそうです。
日本語において、「矢尻」と言う世界的にも珍しい呼び方をされている点を考慮すると、「矢」を発明したのは、日本語を使っていた日本人の祖先、そしてその舞台は現在の私たちが住んでいる、この日本なのかも知れません。
その矢尻が世界に広まっていく中で、各言語の世界において、「頭」と呼ばれたり、「ヒント」と呼ばれたりしたのかも知れません。

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